マンモグラフィー導入検診に向けて

<増え続ける乳癌と日本人乳癌の特徴>
 「21世紀に入った頃には、日本で乳癌が女性の癌のトップになるだろう」と予測されて、四半世紀がたつでしょうか?ところが現実には、21世紀に入る前に乳癌は日本の女性の癌のトップになってしまいました。(人口調整罹患率)。そして最近では年間3万人の乳癌患者の発生をみ、約8千人の方がなくなっています。
 これらの数字は欧米に比べればまだ低い値ではありますが、日本人の生活が欧米化したのに伴い、年々増加している所が問題です。更に、日本人女性の乳癌が欧米の女性の乳癌と異なる所は、40歳代、50歳代、30歳代といった順に罹患率が高く、死亡率のピークが50歳にある点です。欧米での罹患率・死亡率を年代別にみますと、閉経後の罹患が多く、、年齢が上昇するにつれ死亡率も高くなります。しかしながら、日本人の乳癌のたち(悪性度)は欧米よりも良いとされています。そして、日本では早期に発見され治療された乳癌は治る癌とされています。
 従って、日本でも30〜50歳代の乳癌を早期に発見できれば、中年層での死亡率は下がると考えられます。


<早期発見・早期治療を可能にする有効な検診とは?>
−マンモグラフィー併用検診の成績から
 ではどのようにすれば、早期発見・早期治療が可能になるのでしょう? まず一つは、自己検診による発見です。乳癌は胃癌や大腸癌と異なり自分で発見できる癌です。定期的に自分で触って異常を感じれば専門医に診てもらうことにより比較的早期のものが見つけられます。
 しかし非触知乳癌といわれる、腫瘤(しこり)として触れないような早期の癌は、自己検診でも、又これまで行われていた医師の視触診による検診でも発見は困難ですが、こういった早期乳癌の治療成績はステージ0のもの、及びステージ1のものの各々の10年生存率は100%、90%と非常に良好です。ではこういった早期の乳癌はどのようにして発見できるのでしょうか?乳癌の診断装置としてはマンモグラフィー、超音波、MRIといったものがありますが、石灰化でみつかる乳癌にはマンモグラフィーが有効です。石灰化でみつかるような乳癌にはマンモグラフィーが有効です。これまで行われてきた視触診による乳癌検診に関しては、平成10年に厚生省久道班の研究報告(「ガン検診の有効性評価に関する研究」)の中で、視触診のみの検診に対し、その有効性に疑問が投げかけられマンモグラフィーを併用するよう勧告されました。
 ところで、欧米諸国の検診がどのように行われているかをみてみますと(表1)、



各国ともマンモグラフィーのみかマンモグラフィーと視触診の併用で、視触診のみというのは日本だけであることがわかります。そして、各国の「前向き研究」により、マンモグラフィーを用いた検診が有効であるという結果が生まれています。こういったことをふまえてわが国でも10年以上にわたってマンモグラフィーを導入した乳癌検診に関して、種々の研究が行われてきました(表2)。



 その中の視触診のみとマンモグラフィーを併用した場合の成績を比べた「宮城トライアル」の結果をみてみますと、自覚症状のない女性において乳癌の発見率はマンモグラフィーを併用すると、視触診のみの約3倍となり、見逃しを含めた偽陰性率(実際には乳癌であるのに、乳癌でないと判断される率)は、マンモグラフィーを用いた場合、1/4〜1/5に減少します(表3)。



即ち発見率が高くなり、見逃しも減るということになります。そしてマンモグラフィーを併用して発見された乳癌の病期をみてみますと(表4)

マンモグラフィーを併用した場合、視触診のみに比べステージ0期やI期のものが多くなりより早期のものが見つかるという結果でした。
 これらのデータから少なくとも50歳代以上の女性の乳癌発見にはマンモグラフィーを併用した検診が有効であることが示唆されました。
 しかし40歳代や30歳代に関してはまだ実証されていないためマンモグラフィーが良いのかエコーが良いのかといった論議・研究が現在進められています。
 諸外国においてもマンモグラフィーの有効性を示すデータは出ていますが、エコーやその他の装置を用いた場合の有効性の検証がまだなされていないのが現状です。
 こういったことから、まずは50歳代以上の女性にはマンモグラフィーを併用した検診が望ましいという結論に達し、平成12年3月、厚生省から各自治体に乳癌検診を行うにあたってはマンモグラフィーを併用するように通達が出されたのです。

<マンモグラフィー併用検診を支える[精度管理]>

 マンモグラフィーはX線検査ではありますが、他のX線検査に比べやや特殊であります。即ちフィルムやマンモグラフィーの機器そのものが専用のものを用いる必要があり、現像時間も他のものに比べ長く、シャウカステン(フィルムに光をあてて読影するもの)も、専用のものに比べ通常のシャウカステンでは読影しずらくなります。従いまして、良い写真を撮り、きちんと読影できるようにフィルムやマンモグラフィーなどは仕様基準を満たしたものが推奨されています。(表5)

 また、乳房全体をくまなく写し出すために、写真を撮る時のポジショニングが重要で、そのためレントゲン技師さん達に講習を受けてもらい、うまく撮影できる技師さんが検診の場に参加するよう勧められています。(表6)



 さて、こうして出来あがった良質のフィルムを読影するのは医師の仕事です。しかし、ここで見逃していたのではマンモグラフィーを撮った意味がありません。従って、医師にも講習を受けてもらい(大学教授であったり長年乳癌治療に関わってきたからと言って免除されたりしません)、読影能力をみがいたり確認してもらった上で検診に参加してもらいます。さらに実際の検診では医師の二重チェックになっているといった念の入れ様です。
 この様な微に入り細を穿つ検診はこれまでありませんでした。 こういった一連の[精度管理]のもとにおいてはじめて検診時に乳房を圧迫され放射線を浴びる(非常に微量です)女性に応える有効な乳癌検診となるのです。
 それを我々は現在勧めてゆこうとしています。従って皆様も是非新たな乳癌検診を受けてみて下さい。